滑った感じ/八男(はちおとこ)
 


 「いやんばかん木久蔵です」は、オシャレにキマってはいけない。空振りがいいと思う。 

 心の中に本当のものを求めていて、最近は、本にそれを押し付けている。書店で見つけたそれらしき本を買い、胸に支えるような感じで、消化不良のまま読み進む。加速に急ブレーキを含ませながら。
 それはただ、読むのが遅いということなのかもしれないが、気持ちの中に、固定されたものができるまで読んでみる。途中で「わかんねえよ、こんな感覚。依存できません。どうせ俺はひとりぼっちですよ」と、投げ出し、散歩でもしてしてしまえと思うことも度々だが、辛抱していると、確かな実感のようなものにもなる。それは息のふきこまれたも
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