はじまり/……とある蛙
 

生まれた季節は冬の冬
 年の最後のどん詰まり
 暮れ行く年の落し胤
 雪もはらはら降るような

生まれた街は底の街
 上の街のとなり街
 違っているのは人の色
 違っているのは家の色

育ったところは隣の空き地
 いつも人が入れ替わる
 だれのものでも無いようで
 他人のものでありながら。

猫も犬もいた街に
 自分も野良の一員で
 いつもふわふわ漂って
 人の後(うしろ)を追いかけて

空も当時は青かった
 ぽっかり浮かぶ雲の上
 いつもふわふわ漂って
 人を上から見下ろして

心はいつも春先の
 桜の中で日向ぼこ
 花びらの散る庭先で
 あらゆることを夢想する。

自分はいつも独りだが、
 決して寂しい訳じゃない
 心はいつも春先で
 あらゆる場所(ところ)を夢想する。

そして、すべてが始まった。
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