どんな理由をつけたってやってることはたいていお見送りなのだ/ホロウ・シカエルボク
 
来ないのだ
触れようとしても空振りするだけなのに確かにそこにある
あやふやな今よりはよっぽど確かな密度で
流れている音楽の曲と曲との切れ目で不意に一瞬夢から覚めたみたいな
そんな奇妙な感覚が俺の中に訪れる
次の曲の一分五十二秒ぐらいまで
それは長く尾を引きながらやがて消えてゆく
下がり始めた気温のせいなのか両の手のひらにはきめ細かな砂がまとわりつくような感覚
こいつを書きあげてしまったらストーブを入れて嘘のぬくもりを手に入れよう
今日の日ももうすぐお終いだ
通り過ぎているだけなのにひとつひとつが間違いなく終わってゆく
細胞が僅かに量を減らしながら再生していき
意味がなくなるころにその量は完全なゼロになるのだ
俺は自分自身の意味がなくなることについて考えた
どんなことをしてもその時はやってくるのだ
まったく
たまんねえな人生
そろそろ
晩飯の時間だな





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