*夢で君にくちづけをしてしまった*
わたしの身体はしなやかに発熱していたので
玄関で横たわり熱を果てしなく放出した
可哀想な傷たちが肌を走り回る
扉の向こうでしとやかに雨が降る
君の表面をつたう甘えた憂鬱がしどけなくわたしの頬を刺したから
ただただ涙を殺して抱きついた
見つめる、一瞬
眼差しに赦しを覚えたなら、途端
わたしは君にくちづけてしまう
柔らかな隙間をあけて
わたしの入り込む場所を探して
君は嫌がらずに何度もわたしを優しくついばむから
小さく小さく祈るように名前を呼ぶ
ぎこちなくぶつかる剥き出しの膝が
わたしたちのともだちの忠告をその震動で砕いていく
光る、砂
君の髪は濡れている
酸素を君の唇にまとわせるのがわたしの慈しみだよ
うまくうまくうまく
呼吸をしなさい
産声を
あげたら君はただしく生きる
わたしの体温は燃えながら凍てついているけれど
君はなんにも心配しないでほしい
夢の影から沁み出していくわたしの願いなんて
永遠に届かなければ良いよね