des profundis/橙午
清白だつたはずだ
形のないものだけで
単なる好意であつたはずなのだ
それが今は
泥海に喘いでゐる
肉の自由が
かへつて私を苦しめるのだ
知らない君は
あまりにも遠すぎ
永劫 私のものではないのだ
声を聞けば
うれしさとかなしさに襲はれ
向かひ合へば
目を合はすことすら叶はない
あゝ 醜い感情が
タアルのやうに貼りつき
君のゆくへを追送するたび
黒くうごめき 湧き上がる
沈んでゆく
わだかまる全てを抱へて
独り暗い淵に
誰にも知られず
誰にも知らせず
ひつそりと
これ以上は行けない場所へ・・・
「ならば一層、道化になりませう!
演じつづけやうではありませんか!ただ一人、君のために!」
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