ミッドナイト・シアター・ブルー/楽恵
 
映画館の観客席で  
私はサイレント映画の最終上映を観ている
スクリーンの中では 
どこか大きな河の岸辺に
冬の渡り鳥が集まり 
その鳥を1羽 
少女が肩に乗せている

枯草と砂でつくられた土手のうえに 
少年が一人やってきた
彼女は手を振って 彼を呼び寄せる 
彼の右腕には 真っ白な包帯が巻かれている

彼女は鳥を連れたまま 彼のもとへ走りより 
砂地の中で追いつく
彼女がその包帯はどうしたのかと尋ねれば  
彼は少しはにかんで
百日紅から落ちたのだと答える



眠け眼になった私の目の前で 
渡り鳥がいっせいに飛び立ち  シベリア
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