骨達/瑠王
 
人知れず錆びていく駅の鉄の柱達
開線当初の嬉々とした輝きは
今や夕暮れに溶け込んであまりにも静か

僕らを囲むすべてが知られることのない歴史を持ち寄って
今日を構築してる
遡ればほとんどのものに人の手が関わってくる

種を蒔いたのは誰だろう
ペンキを塗ったのは誰だろう
花を添えたのは誰だろう
石を削ったのは誰だろう

開拓されたこの地に初めて辿り着いた人達のこと
同じ空と景色を見ていたという不思議

数えきれないくらいの人が掴んできた手摺り
様々な人種の人がステップを踏んできたフロア
骨董品屋で買ったこのフランス製の古い革靴を
かつて誰が履きならしたのか

一瞬の火花が散る
ひとときの花が散る
重要なのはそれまでの過程
幸せな街の喧騒が少し物悲しく見えてくる
哀しみも行着く先が同じ永遠であるのなら

歴史ある骨達がこの星に埋もれていく
そしてやはり僕は
三枚の小銭と引き換えに煙草をくれるこの老人の歴史を知らない
知らないのだ、彼の心が今とても安らかなことを


戻る   Point(8)