ハリボテ/葛西曹達
ほんとは構ってほしいのに
心の中の絶対防衛ラインは
だれにも破られない自信がある
そんなくだらない虚栄心で
ハリボテを作っては
弾けないギターを弾いて
静かな気持ちになろうとする
りんごと月の偶然で
ニュートンが閃かなかったら
僕らは自由だったし
空も飛べたかもしれない
「人を好きになる」とは
どういうことなのかって
日々目移りするのに
なぜか頭に張り付いている
治まらない心の声は
プールに潜った時の
ごにょごにょみたいな音で
僕を悩ませるんだ
僕のほしいものは
コンビニには売ってないし
ロケットで月に行ったって
見つかりそうもない
だから世界中のガラスを
叩き割る旅に出たんだ
夜中の街を行く自転車の
カラカラ乾いた音に連れられて
いつか僕も壊れるだろう
ハリボテを壊してほしいんだろう
さびしいことを認めるのは
とても勇気がいると思うんだ
夢は枯野をかけ廻り
声も涙も枯れ枯れで
そんな僕にも こんな僕にも
いつの日か陽がさしますように
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