ただこの声だけを奪ってほしい/瀬崎 虎彦
 
いうなれば愛は無限の
ススキのなびく秋の平原で
近く遠くチラつくフィルムのフリッカーを
懐かしく水面に浮かべて掬う

木漏れ日はマンションの壁を暖める
窓枠は世界という景色を作品に仕立て上げ
同じ景色を見続けることで
自分の定点観測が学術的価値を持つように

まばらな微笑に希望を探すのでもいい
ミニスカートに視線を奪われるのでもいい
ただこの声だけを奪ってほしい

届かない歌に意味があるか
届かない声に意味があるか
ただこの声だけを奪ってほしい
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