窓。/hope
フリも、移り変わる季節を前に目を閉じるのも、もうこれでお終い。
驚くほどに静かな心は、驚くほどに全てを奪ってゆくのです。
吐く息に「さようなら」。
明日の私に「さようなら」。
それは言葉じゃ追い付けない程の、心情の吐露。
それが、私の精一杯だったの。
眠りに就こうとする意識の向こう側に、
背伸びをしていたころの【私】をみつけました。
つきあかりに照らされた外の世界が見たくて。
風が吹き荒れる雨の轟音の正体を知りたくて。
穏やかな空の下で笑う誰かの笑顔が見たくて。
届かない窓に向かって、一生懸命に背伸びをしていたころの【私】を。
すっかり忘れてしまっていた私は、それが大切だったのかさえ自信が持てなくなっていました。
けれど、全てはもう手遅れで、だからもうどうでもよいのではないかと思った。
そして私は、もう「おはよう」なんて言わなくて済むから、やっと安心できたのです。
「さようなら」はきっと別れの言葉で、
その言葉を言うべき瞬間が、きっと今なのでしょう。
仔猫が静かに啼きました。
私も静かに泣いていました。
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