R/有邑空玖
 
いたりしても死者は戻らぬ事を知れば良いのだ。


           …………どうしてうでをきるの。どうしてきずつけるの。


 ああ、


    (空は今日もとても青い)


 腕の包帯が綻びてしまった。


    (憶えて居るだろうか。近くの梅の木は春に成ると白い花を咲かす)


 もう、


    (そして夜に一番強く香る事を)


 傷も痛まなく成った。


    (あたしはまだ憶えて居るけれど)


          …………もうRのゆめはみない。えいえんはどこにもない。


                  
(詩集「不可視」より)
  
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