水辺の夜明け/プル式
 
美しい夜の匂いに身を震わせその全てを溶かすのだ
染み込む様な水の匂いに甘いカラメルの様な薪の匂い
刈りたての柔らかな藁が夜気を含みいっそう柔らかになる匂い
遠くに見えるオレンジ灯りは学校の宿直だろうか
遠く星の渡る空の向こうには何が有るのだろうか

そうだ夜に梯子をかけて屋根を渡ろう
三つ隣の街に行って誰からも愚かだと言われる事を成し
あの小さな星の様にいつしか消える瞬きとなろう
燃えさしの蝋燭の様な心を一瞬の輝きに変えて仕舞おう
そうして街を渡った後にはきっと笹舟を折るのだ
何処までも遠く星を渡る小さな舟を造るのだ
船頭になってこの河を流れる様々な願いを集め
星々を紡ぎ
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