残留思念/ホロウ・シカエルボク
 



甘い歌を繰り返してよ
甘い夢を繰り返してよ
気が済むまでどうぞ
気に病むまでどうぞ
凍てつくようなゆうべの空に
指をはなれた蝶が飛ぶ
ふわり
ふわり
ゆらり
ゆらり
旋律をたどるのには飽きた
届くか判らぬか細い声で
誰かの足音を待ちながら
歌うことにはもう飽きた
夕焼け
小焼け
まばたくと夜だ
道祖神の背中で
いっそう暗いなにかが笑う
ゆらり
ゆらり
はらり
はらり
はや駆けのようにすすきを突き抜けてゆく北風
ふっとかたわらに飛んだ小さな草の切れっぱし
沈む一瞬
燃えてるみたいに見えた
沈む一瞬
空が燃えてるみたいに
行きたくな
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