団地/haniwa
足音が止む
正しく回り終えようとする世界の終盤で
足音が止んでしまう
だけど無駄な抵抗を蔑むように
コンクリートは一斉に光り、
夕飯の匂いが漂い
子供の笑い声が聞こえる
なにも迷うことはなくて、
その階段を昇って4階のドアを開けるだけなんだよ、君
駐車場には黄色いクーペはもう無くて
白いワンボックスがあって、
それは君の相棒じゃなくて
君の家族の道具なんだよ
夕暮れ、団地の入り口で
一人立ちすくんでいる男がいても
日が落ちる頃には
乾いたテレビの声と食器の音がするだけ
真夜中になって入浴剤の匂いも消えて
それが巨大な墓石に見えたとしても
君には関係ないことなんだよ
今日も一日正しく回ったね、世界
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