数え切れぬほどの幸せな家庭が暖かい屋内で晩餐をとっている時間に私は一人雪の降る街で/
瀬崎 虎彦
雪の降る街の景色を
音だけで感じている
悴んだ手が赤くなり
サクサクという音が
足元から立ち上って
靴底から垂直に体の
芯を冷気が掴んでは
私の細い心臓を震え
あがらせているのだ
季節は冬数え切れぬ
ほどの幸せな家庭が
暖かい屋内で晩餐を
とっている時間に私
は一人雪の降る街で
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