世界の終わりに/いのせんと
堕ちてきた空の浮遊する曖昧なままの姿で天使は悪魔に恋をしてしまったと呟いたのを聞いたんだ太陽の熱に冒されてしまった頭じゃなにも考えられなくて大量に流れ込む情報の波に飲み込まれてしまうだけの姿を思い浮かべる子供じみた感情を持て余している老婆の老いた皮膚の失われた弾力を求めて温もりなど失くしてしまっただろう蒼い月の光の下でしか空を飛ぶことなんてできない羽虫のような自分がそこにいるんだってそう思うよ
なあハニー、この世界の中心がどこなのかなんてそんなくだらない考えはよしなよ暴力的に流れていく時間の中に投げ出された赤ん坊の泣き声なんて破裂した手榴弾の煙に撒かれてしまって見えなくなった星の瞬きと同じくらいにそこに理由はなくなってしまうんだということなんだよわかるかい?
れんげ草を摘みに出かけた少女の黒い髪がきれいな弧を描いているのを見たんだってあの子が言ってたんだけど知っているかい?
なあハニー、世界の終わりなんて当の昔に過ぎてしまっているんだよ
だからもう
今を生きるしかないってことなんだ
わかるかい?ハニー
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