悪魔にラヴソングを/楽恵
 


娘は処刑の十字架から降ろされた神の子の足もとに駆け寄るように
悪魔に駆け寄り青ざめた顔にキスをした
悪魔の鋭い歯で
娘の唇はすぐに血だらけになり全身が真っ赤に染まった


黙示録に予言されている悪夢のように
二人は接吻を交わし続けた


太陽が沈み始めると
大きな十字架の黒い影が
悪魔の身体を覆い始めた

どこか絶命の予感がした


だが悪魔は
娘との死の接吻から離れられないでいた
息も絶え絶えな二人の熱情にあてられて
周りの棘草の花々が狂い咲きしていた
悪魔はその娘の正体が
悪魔狩りの天使だと気づいていた


聖なる十字架の黒い影が
己の肉体を焼き焦がしていく匂いのなかで


嗚呼、俺は生まれ故郷に戻ってきたのだ、と悪魔は思った
あの懐かしの
炎燃えさかる地獄の入り口に



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