悪魔にラヴソングを/楽恵
 
ある国に住んでいる悪魔が
ある教会の美しいステンドグラスとオルガンと聖母子像と黄金の鐘と
そこで毎日祈りを捧げている敬虔な神父を激しく憎んでいた

彼は日が暮れると宵の明星、魔王に誓いをたてた
忌々しい神父のひとり娘を
この世から亡き者にすると

礼拝堂の前で悪魔は神父の娘を待ち伏せし
娘の前に美しい金髪の青年の姿で現れた
娘は初めて出会う見知らぬ青年にも
犠牲の羊のような穏やかさと親切さで接した

悪魔は間近でこの乙女の眼をみた
娘の青い瞳は
暴力的な無垢さと純真さに溢れていた
その純潔の白い幻惑に
悪魔の眼は夜明けの金星のように瞬いた
凍っているはずの己の全
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