月明かりの僕たちに/いとう
 

僕たちが狩りをするのは
生き残るためだったはず
いつのまに
狩りをするために
生きていることになったのだろう
などと僕たちが
思うはずもない
僕たちは今まさに
狩りをしているのだから

夜の月明かりに群れるものたちを
僕たちは息を潜めて待つことなく
むしろ僕たちが月明かりとなって
誘き寄せ、食む
ことなくいつしか
息をすることを忘れたように
それが呼吸だと気づかないうちに
僕たちは満たされているのだ
何を狩ったのかも
思い出せないで
空腹すら
思い出の向こうへ

僕たちの中には
いくつかの悲劇と苦難があったはずだ
それを忘れたとしても
それは
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