見かけ倒し/中原 那由多
 
騙された方がきっと馬鹿なのだろう

色褪せてゆく写真をいつまでも握り締め
捨てる機会を伺っていた
自発的な行動が出来ないまま
差し伸べられた救いの手にすがり付くも

それは青白く冷たいレプリカ

思わず手離したその時に
ようやく素直に向き合えた


時間をかけて糸を紡いでみても
切れてしまうのは一瞬の出来事
完成形よりも、むしろその過程で満たされていたせいなのか
結末を無表情で見届けていた


安い笑顔に揺れ動いたのは
以前、逃亡者だった名残らしい
沼地を十分ほどうろついて
遂に何一つ拾うことはなく
来た道を引き返すことにした


雑音が取り除かれた箱の中では
見えなくなったはずの星が輝いていて
味気無くも純粋なカタチを取り戻しつつある

机の上の白い花は
北風にさらされてしまい
黒く小さな斑点が踊り出そうとしている



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