愛について/渡邉建志
不思議な
でもどこか懐かしい音楽が聴こえていた
見回してみるとそこは上演前のプラネタリュームのようだった
僕は椅子を後ろに倒して大きな伸びをした
それから暗い天井を眺めて何かが始まるのを待った
天頂から小さな道化師がとことこと踊るような足取りで
僕のほうに近づいてきた
彼は僕の手を取って強く引っ張ったので
気がつくとすべては後ろのほうにあった
僕の耳元には風鈴があった
道化師があんまり速く引っ張るものだから
それはとてもこまかに震えた
やがて遠くからきれいな歌が聴こえ始め
そのころには道化師はどこかに行ってしまっていた
声がするほうの惑星はたいそう強い引力を持っていた
それが藍色に光っていたかどうかは結局分からなかった
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