黒の悟り/朧月
 
お葬式の列は黒の人の群れ
目の淵を赤くした人の群れ

カラスが電柱にとまってみていた
身づくろいしてみていた

喪主のあいさつは涙まじりで
関係の薄い人も泣いた

いったいなににおがんでいるのか
わからないまま頭を垂れた

夕べの罪を忘れたのかと
ふいに頭の奥で声がする

後悔するような決断を
またしそうになる

お葬式がえりのこの身は
穢れといわれるが生まれ変わった気分だ

明日へもしれない我が身を想う

病んでいるなくしたくない友を想った
しなないでほしいと想った

赤黒く染まった紅葉を見ながら
しなないでほしいと想った

終る間際の人の心理を知りたいと想った

あきらめ以外の境地を
ひとめでいいからみたいと想った

お葬式の黒の群れに染まったら
自分の気持ちが静まった

いつか自分の番がきたら
静かにおくってほしいとそう想った




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