バス停/……とある蛙
僕は 今 丘の上に立って
不況のため売れ残りの目立つ
広大な分譲地内の家の屋根を見ている。
ちょうどあの時のように
あの時
僕は屋根の上に昇り
両足を抱えて
君の家の屋根を見ていた。
あの春、入学式へ行くバス停で
初めて君を見た僕は
君のことは知らないのに
君のかぁさんと仲良しだった。
君の家とは近所だが
電車で遠くの中学へ通っていた僕は
君と会わずに過ごしていた。
けれどもなぜか
君のかぁさんと仲良しこよし。
花ビラと砂埃舞う風の中
バス停で僕とお袋は
君と君のかぁさんを待っていた。
初めて君を見たときは
長いスカートを手で押さえ
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