妻の姿の好ましきかな/生田 稔
 

今日一日妻の留守を預かりてなすことは学問語学を学ぶ

タレガのダンサモーラを弾くギター横から聴きつ歌をつくりき

独りしてシューベルト聴きつ母のこと思いうかべり霜月の朝

世界は広し生きてゆく希望は湧きぬふと母の声きこえてくる

霜月の朝咲きいでし朝顔の青き色には思い出うかぶ

でも今日はおくりて出てはくれるなと妻はそさくさと出ず

朝焼けてほほに涼しき冷気受け空を見上げて妻思うなり

8時間妻は留守なり有益に時を過ごさむことをのみ思う

人みればただ美しいその言葉そう言う他になんと言うべき

歌なせば言葉使いに限りあり限りの中にあるにしかざり

困苦にありただ明日の外出と買い物などに興をよす

老いの唄さまざまにありぬべしこれからの老いどうなりぬるや

連れ立ちて後田のふちに佇みて鳥が飛び立つしばしの間にも

何事も歌になすため在るものと信じて今日も歌を詠むなり

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