むし/
シネマホリック
蟲が這う
周りには目もくれずに
否
彼には周りが見えていないのだ
アスファルトに
ただ一人
彼は孤独だ
彼には沈黙しかない
それでも彼は這う
何も見えていないのに
そして彼は
道行く車に轢かれた
彼の肉は
舞い落ちた花びらのように
彼の血は
こぼれ落ちた涙のように
アスファルトにひろがった
彼が最期にあげた声は
とても小さくて
誰にも聞こえなかった
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