むし/シネマホリック
 
蟲が這う
周りには目もくれずに

彼には周りが見えていないのだ
アスファルトに
ただ一人
彼は孤独だ
彼には沈黙しかない
それでも彼は這う
何も見えていないのに

そして彼は
道行く車に轢かれた
彼の肉は
舞い落ちた花びらのように
彼の血は
こぼれ落ちた涙のように
アスファルトにひろがった

彼が最期にあげた声は
とても小さくて
誰にも聞こえなかった
戻る   Point(1)