古墳公園を歩く/楽恵
いつもより遠出した散歩の途中
気がつくと僕は
古墳の前にいた
その古墳のことを
僕はそれまでただの自然の丘だと思っていた
『県指定史跡』と書かれた案内板に
黒い鳥が一匹だけ止まっている
古代の英雄が眠る前方後円墳は
周りの木々を綺麗に伐採されて
今ではただの史跡公園になっている
墳丘を取り巻くように
わざとらしく置かれた埴輪のレプリカを横目に
罰当たりかもしれないが
僕は山登りの感覚で墳丘に立つ
墳丘のうえは
思ったより遠くが見渡せて
とても気持ちがよかった
白く枯れた冬の芝生の上で
裸足になり
千五百年くらい前に盛られた土を踏みしめる
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