虹を駆ける少女/楽恵
 
青銅製の戦士像
錆付いた彼の硬い頬に
涙がひとすじ
流れてる


多感な彼女は
どこにいてもそれが分かる


神様のように優しい雲たちが
どんなに慈悲深く
覆い隠そうとしても


生れ落ちたばかりの赤子に与えられてしまう運命や
永遠の決別のために出会う恋人のこと


少女は
顔をあげたまま
まっすぐに立っている


太陽に許されている限り
降る雨はどこまでも感傷的だから


花々の種子を運ぶ風に
透明の粒が乾いても


まだ
瞳を閉じて
恋に恋している
夢を夢見ている


小さな紅の 
ペディキュアだけを武器にして


雨あがりの空に
少女
虹をかける

戻る   Point(5)