二度とは口にせずにいた/吉岡ペペロ
 
足もとのカラスは飛び去らなかった

朝のホテル街をふたりで歩いた

いいのに、でも、ありがとう、

女を駅まで送っていた

ぼくらはたとえ話のなかを生きている


これは、なにかの、寓話なのかしら、


あのとき聞き返したけれど

女は二度とは口にせずにいた

過ぎてゆく今は

なぜ後戻りしてくれないのだろう
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