カメレオン飛ぶ/楽恵
 
なぜならカメレオンはいつも
大きな光る目をギョロつかせ
空ばかり見ていたから


彼は毎日
空ばかり見ていた


ある日街に
涙の海が津波のように押し寄せ
ライオンの親子が避難するため
カメレオンの棲むポプラの木に登り始めた


カメレオンは木のてっぺんまで追い詰められ
ライオンに食べられてしまう恐怖のあまり
夜空に輝く星のように光になった
その姿はまるで
クリスマスツリーの天辺にある星のようだった


ある日の朝
涙の海はついに満潮となり
ライオンの親子は溺れてしまったが


その時カメレオンは
ふわりふわりと
木登りをするように
空を飛行し始めた


カメレオンが空を飛んだ!


やがてカメレオンは

青色に溶け
空に消えた


その日以来
僕の街は涙の海に沈み
僕は空飛ぶカメレオンを見ていない

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