カメレオン飛ぶ/楽恵
丸い鈴の葉と
赤いリボンを生やした大きなポプラの木に
いつからかカメレオンが一匹棲みついた
僕はいつもプロペラ飛行機の窓や
鉄格子の向こうからそれを見ていた
彼はとても臆病なカメレオンで
危険を感じるとすぐ周囲の色彩に同調し
日めくりカレンダーのような速さで
全身の色を変えた
誰よりも怖がりなカメレオン
夕陽の眩しさに驚くと
パパイヤ色に
戦争で街が焼ければ
真っ黒な炭に変身した
カメレオンの変身があまりに巧みだったので
誰もそれがカメレオンだと気づかなかったが
僕はカメレオンがポプラの木のどこにいるか
すぐに分かった
なぜ
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