檸檬/木屋 亞万
 
そしてその檸檬が生み出すレモン水の味を求めている
暑い日にも寒い日にも、そのどちらでもない日でさえ私は
勉強に明け暮れた夜の3時にも
熱にうなされた昼下がりにも
あるいは高級な洋菓子をいただいた日曜日にも
私はレモン水を飲むことができた

最近どうにも口の中が苦くなって、レモン水は遠いものになった
化学薬品に身体を蝕まれて、細胞のいくつかが権力に反抗し始めた
私の世界は生まれたての赤ん坊のように狭くなってしまった
背中はほとんどベッドに張り付いたままで
骨よりもベッドの方がよく曲がる
パイプを吹いて小さい玉を浮かばせる子どものおもちゃみたいな
馬鹿でかいプラスチックのパイ
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