未だうまれぬわたしのこども/笠原 ちひろ
 

実家に帰ると
母は今の母で
わたしが思っているお母さんとは違う
いろいろあったもんね
川の形だって水の流れで変わるんだもんね

でもわたしの頭のなかのお母さんはやっぱりいつも不幸で
あたしが部屋にこもっていても
壁ごしに何かに八つ当たる音が聞こえてきていた記憶

気を抜いたら
いまのお母さんじゃなく
そんなお母さんを思いだすから
こわいよ
もういないものに対して
憎しみにふるえる
自分が嫌だよ


自分のこどもには
そんな思いはさせたくないと
万全を期したいと
決心するのだけれど

万全を期したいと
やる気まんまんだったお母さんが
あたしにはとて
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