盲目の贄/
ななひと
触れる息づかいの細かさが、
粉雪となって降りしきる夕闇の皮膚。
染みのように足跡が
水平線に向かって伸び、
従順な獣のようなひとときが、
手ざわりに消えていく。
顔のない人々が、
薄い膜となって過ぎ去り、
残された結び目が解けてゆく。
意味から締め出された少女。
逆さまに照らされた蝶は、
表情のないひらがなのようによろめいて、
盲目の太陽の贄となる。
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