蜜/あぐり
てしまおうとながれ
(想い出が増えるからわたし、泣いている)
いらないものを見つけられない浅ましさは
べとつく甘さでしかなくて
あなたの為に剥こうとした
熟れすぎた実に刃が滑り
左手の人差し指が揺れた
こんなにもこんなにも
想い出はいらないのです
忘れてしまわぬようにと埋めたあの種が
わたしのからだ、みぞおちから芽を出す日を待ってるまっている
善くないとして
善くないとして
それでもわたしは悪くないよと笑うあなたの
身勝手な蜜に満ちて
また熟れていく、柿の実が
ぼたり ぼたりと落ちるのを
ひとり
数えて眠ろうとしている午前三時二分
また落ちた実を
食べることもせず見つめて
ひとり
数えて眠ろうとしている午前三時二分
}
戻る 編 削 Point(7)