さよならの合図/木屋 亞万
 
あなたが私でいる間は
私はあなたでいようと思う

今日は寒くてとても晴れていた
私の中は雨が降っていて
温かい一日、ポケットの懐炉のよう

そこには龍が浮かんでいる
飛ぶという表現では大袈裟すぎる高度で
枝に引っかかった蛇の目で
私を威嚇して
お前を殺してしまいたい
という目をした刹那
目の焦点を
狂わせて
黒目は両端の上部に引っ張られていく

磁石の目をした
おもちゃの金魚はひんがら眼
水の入ったプラスチックのお腹を押すと
ぺこんと凹んで短い首と顔を反らせる

さよなら、さよなら、
合図は三回、さようなら

あなたがあなたについて悩む
あなたの
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