ある夜の車両で/八男(はちおとこ)
肩にもたれてきた女
ぐうぐうと
すうすうと
重さがだんだんかかってくる
すでに目的の駅は過ぎ
遥か遠くに
待っている人がいる
海が見えてきた
眠っている女
髪を撫でる
ほんのりといい感じで
酒と香水の匂いが混じっている
手を握る
握り返す女
汗ばむ
この女が好きだ
この女を愛している
顔も知らないこの女を
熱く愛して溶けていく
肩に手をかける
なおいっそう強くもたれかかってくる
このまま
強さに負けて
つぶされてしまいたい
永遠に止まらないでほしい
ガタゴトと
どこまでも
この音を聞きながら
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