深淵/相田 九龍
 
いつもより明る過ぎる月の光
夜に引っ張り出された君の影

静けさを含んだ風が
雨のように降り
草はサラサラと内緒話を

手にとれるだけの悲しみが
ふと首をもたげたとする



月夜が包む草原に座り
目を閉じて
朝焼けを想う

いつかの朝焼けを想う

桃に染まった空



月の光が心を透かす
それでも見えはしない
心にできた暗がり



聞き慣れた言葉を呟いた

夜露 覆う 夜露 涙か


言い慣れた台詞を確かめた

深淵 沈む 深淵 聞いたか
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