『鱗翅目』/
東雲 李葉
く光を求めて飛んでいた。
暗闇の中で煌めいたのは翅ではなくて糸だった。
酸素が薄くなる部屋で冷たくなっていく身体を、
俯瞰で見ていた時にまた、あなたに会いたいと思っていた。
牙を研いていておくれ。亡骸を暴いて咬んでくれ。
糸が赤く染まっていく。僕はあなたに殺されたかった。
美しい翅が視界をかすめる。淡い粉が瞳を覆う。
あなたは、あなたは美しい。
僕は奇妙な蛾だった。
あなたとの違いも分からないのにあなたが愛しくて堪らなかった。
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