『鱗翅目』/東雲 李葉
 
幼い頃は持て囃され甘い菓子で育った。
少年の時は真っ白な繭が僕を守り養った。
やがて呼吸も自由に羽を広げる頃、
誰もが欲しがる平等を平然と飛び越える翅。
指折り数えた確率は出会った瞬間に吹き飛んだ。
あなたにとって詰まらないそれが今までの僕を支えていたのに。
神に祈る気持ちでその名を口にする。
忌々しくて憎らしいのに、どうしてここが熱いんだ。


篝火に飛び込む羽虫を嘲笑った僕は奇妙な蛾だった。
妙に賢い振りをして自ら闇を選んで飛んだ。


毒を盛った蜜を吸わせてやりたいほど、
遠すぎて近付けなくてどうすればいいのか分からない。


灯りを求めているのではなく光
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