眠りによせて/瀬崎 虎彦
 
寝入りばな
夜の船に乗って
黒く澄む空を
たゆたっていた

静謐なガラスの船は
住むもののない水底の
果てない深さを
ギラリギラリと見せた

こわいよと口に出す
まだ眠りに落ちてはいない
だからこの水に触れてはいけない

こわいのと聞き返す
まだ意識が咲かぬつぼみのように
その日の記憶に宙吊り
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