もう一つの黒い月ーメタフォルモーゼ・怒・寂/……とある蛙
鬱蒼とした樹木の間から
黒い月が煌々と光る
青い空が見える。
しかし、決して昼間ではない。
ここで飛ぶ鳥は梟であるし、
地面には野鼠どもが
異様に光る目をこちらに向けている。
自分は森の中にいる。
初めて気づいた俺は
辺りを見回すが蚰蜒など地面の虫けらを
除きさほど不快な生き物はいなかった。
俺の手の爪は指の間にあり、
俺の体は驚くほど軽い。
ジュンプ一閃樹上に駆け登って
駆け降りた。
小動物は俺を避け木から
いっせいに逃げ出した。
いくぶんの頭痛はあったが、
むしろ心地よいくらいだ。
喉の渇いた俺は
森の外れの谷まで疾走し
そのまま谷底ま
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