愛の賛歌 /服部 剛
 
な 
懐かしいオペラのCDを 
(これをかけて)と僕に手渡すので 
再生ボタンを、押しました 


「 戦後間もない1〜2年は 
  あらゆるジャンルで素晴らしい 
  芸術が生まれた、あの頃が懐かしいね・・・ 」 


そう語り終えるやいなや 
お爺さんはおもむろに 
お婆さんの手を取り、 
接吻(キス)をした・・・ 


  * 


この詩のような手紙の中に 
そっと告白するならば・・・ 

僕は年の瀬に 
お爺さんと暮らしている 
独身のひとり娘さんへ 
密かな恋文を出すでしょう 

戦後を立派に生きて来た 
お爺さんを前にすると 
今にもたじろぎそうな僕ですが 

おそらくきっと 
人生と愛のあらすじに 
「正解」という文字はないですよね? 

今はまだ、おもむろに 
娘さんの手を取り 
接吻をしたりは、できないけれど。 







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