思春期/しめじ
 
中している

そこに迷い込んだ一匹の青魚
たぶんサワラだろう
蛍光灯の中を精虫が泳いでいる
魚はそれに釣られてやってきたのだ

しかし脚立にとっては良い迷惑らしく
乗客達はあからさまにあしざまに圧倒的に
怒気を魚に向けて飛ばし始める
怒気はトマトの形を取っていて箱の中はいまや赤一色に染まっている
青い魚は怒りのつぶてを食らって
赤黒いはらわたに包まれていた

水気の多いトマトの匂いに混じる仔羊肉のような匂い
隣の男が自分の脚立を少女の白い耳に押し当てている
少女の耳はすり切れてペンネのように丸くなる
無数の少女が白いペンネを持っている
少女らの髪は黒い
無数の人差し指がペンネに群がって離れない
少年だけが独楽を回し続ける
もはや少年だけが独楽回しに熱中していた
窓の外カラスが三度鳴いた
緑色の独楽が転ぶ
死んだ魚の目
脚立が立てる摩擦音
少年は誰のためでもなく涙を流した
近い未来の自分の人差し指のために
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