見えていたのに見なかったもの/
瀬崎 虎彦
街路樹に寄り添って
まばたきを我慢すると
色々なことが見えてくる
見えていたのに見なかったもの
園芸店の軒先で
ペチュニアがビニールの容器に
無造作に投げ込まれて
冬の曇天を眺めていること
僕の左手の薬指の爪が
右手のそれに比べて
ずいぶんと長いこと
仕事もせずにふらふらして
こんなに大きくなって
いろんな人に心配をかけていること
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