とある店にまつわる話/相田 九龍
れて何を見て何をしていたのか
何も思い出せないんだ
なあ
何も思い出せない
それは
よくあってはいけないことだろう?
通りを、遡る。どんどん、足が早まる。私が失われた、
通りをすれ違う人々、誰もが私に逆行する。
いや、私が誰もを逆行する、つまりすべてが私を否定する。
辺りを見渡す、進むごと、見慣れない店が増えて、店は私を肯定しない。
通りを遡る、車が物凄いスピードで走っていく、視界が揺れ、
誰もが私と逆の方向に向かう、見つからない。右の腿が激しく疼く。
腋の下と背中に、とても嫌な、たくさんの汗、
店が見つからない、私を返せ、私を返せ、どこだ。私は、店は、
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