眠れない夜に/相田 九龍
 

数々の自殺者に向けた
鎮魂歌のような眠りを
ふかふかした布団で
君は暖めている

たくさんの人が死んで
今もたくさんの人が死に続けて
地球の裏は春で
多分君は今それを知らない
考えもしない
しめやかな葬式が終わった後の
彼らの家で
彼ら以外の家族がそれぞれの夜を送って
それぞれの夢を見て
僕たちは健康だ
爪はピンク色で
頼まなくても呼吸する
全身にある毛はニョキニョキと
したたかに順調に伸びる

人生のよう
ではなく
これはつまり人生そのもので
この夜も人生もこの詩も僕も
批評家が複雑な関係を提唱するずっと前から
平行して存在していて
平行して朝へ向かっていく
命を食べ続けた人の肉が
燃えて灰になって涙を残す朝へ向かって
その朝が太陽のために存在することを
静かな声で君は歌う
それ以外のことを今僕は
考えない
考えたくもない

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