冬空の埋火/たりぽん(大理 奔)
 
眠れない夜の窓際で
二重に映る折れそうな月
見つめるわたしの虚像が屈折して
見知らぬ冬をさがしている

ひときわ風の音が強く思える夜は
肩の震えが止まらないものだ
ハーパーを湯で割って
むせながら忘れようとする

思い出す必要もない言葉を
忘れることのむつかしさ
階段の踊り場で
なにげなく振り向いてしまう
何度もなんども
そうしてきたように

瞳の奥が刺されるようだ
まぶたを閉じても
独り言のように流れ出る
それも、思い出す必要もなく

窓を開け放てば
窓を開け放てば

重なり合う月の虚像
折れそうな針に手を伸ばし
指先にほんとうの痛みが欲しい
肌が割れるほどの冷たさの
その罰に満たされれば

風が止んだというのに
耳鳴りが肩を小刻みに揺さぶる
いつものバーボンにむせながら
あきらめに似た淋しさに
かすかな温もりを探し当てる



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