傷の広場/木立 悟
 





むらさき
むらさき
光の仕草へ
近づく空


歩いてわたる
歩いてわたる
うつぶせの鏡の群れが浮かぶ水
背から背へ 背から背へ


城壁の角
影が空を仰ぎ見て
月が雲から出るたびに
白く息を吐き出している


窓にはり付く鱗の夜に
何度呼びかけても応えはなく
ひしゃげた鉄の音ばかり
虚ろが虚ろに響くばかり


まなざしは離れ
まなざしは擦り
等距離につらなる雪と雨
羽は擦り 頬は擦り


問いは寄せ 問いは返し
夜の広場は灯にひたる
誰も居ぬまま
影は群れる


背から土への短い間に
星は冷えてひらきひろ
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