アラスカ行きの約束/吉岡ペペロ
 
まだぼくが幼かったころ
不倫あいてに
星野道夫の旅をする木を読んであげていたことがある
あいてはそのまま眠りたかったに違いない
まだぼくは幼かったから
からだをいたわるふりをして
あいてに反応をつくりだそうとやっきになっていた

うすめたみずのりがあらわれると
あいてはぼくをそこに入れてしまおうとした
まだ幼かったぼくでも
そのリスクは分かっていたから
指だけでイカセヨウとやっきになっていた
あいてがかるくたっすると
みずのりがびしゃびしゃにかわった
ひらべったい泪のようだった

ゴムをつけてあいてに入れる
あいてもぼくもため息をはく
まだぼくは幼かったから
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