月明かりなんて視界にない/かえで
手首を見せ合った私達
紙上では血の気も通わない傷だらけの腕
どうしても未だに目がいってしまう
それは一番素敵なアート
夢中でお互いを貶しあった
サディスティックの前兆
煙草をふかし過ぎた
モノクロの部屋
残像と共に置いていったドライフラワーの匂いは
むせ返るほどに
心に染みる
あいつはもう逝ってしまった
いつか誓い合った言葉の通りに
私は繰り返されるながい夜更けの中で
同じことに気をとられては
小箱にしまったはずの手紙を広げて
忘れたくない一握りの出来事を思い続けるんだろう
月明かりなんて視界にない
祈りはしない
ただ今は目の前を埋め尽くす闇から出たいだけ
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